心筋炎の多様性と免疫病態—基礎と臨床をつなぐ視点から

Myocarditis:diversity and immunopathology from a translational perspective

　心筋炎は，心筋を主たる標的とする炎症性疾患であり，その発症機序や臨床像は極めて多様である。炎症細胞の心筋への浸潤と，それに伴う心筋細胞傷害を特徴とする。成人では剖検例で10万人当たり約115人，小児では年間約80例と報告されているが，軽症例の見逃しや，一部の拡張型心筋症が慢性心筋炎に由来する可能性を考慮すると，実際の有病数は過小評価されている可能性がある。

　近年，COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎，免疫チェックポイント阻害剤（immune checkpoint inhibitors；ICI）に関連した心筋炎，新興ウイルス感染症（例：COVID-19やオズウイルス）など，診断機会と疾患認知の向上により，心筋炎が注目を集めている。