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はじめに
——新型コロナ発生から統括庁創設まで
2019(令和元)年12月末、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19という。)が中国武漢市で原因不明の肺炎として報告され、2020(令和2)年1月には日本国内でも初の感染者が確認された。
その後、同月には閣議決定による政府対策本部(新型コロナウイルス感染症対策本部)が設置され、同年2月には新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の立ち上げや「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」の決定等が行われた。同年3月には新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号。以下「特措法」という。)が改正され、COVID-19を特措法の適用対象とし、特措法に基づく政府対策本部の設置、基本的対処方針の策定が行われるなど、特措法に基づき政府を挙げて取り組む体制が整えられた。
その後、緊急事態宣言の発出、医療提供体制の強化、予備費による緊急対応策や補正予算による対策、まん延防止等重点措置の創設等の特措法改正、変異株への対応、ワクチン接種の実施、行動制限の緩和など、ウイルスの特性や状況の変化に応じて、社会全体の危機管理としてCOVID-19への対応が行われた。
2023(令和5)年5月8日からはCOVID-19を感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)上の5類感染症に位置付けることとし、同日に新型コロナウイルス感染症対策本部および新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針が廃止された。
次の感染症危機に向けて、COVID-19への対応に関する政府の取り組みを客観的に振り返り、課題を整理するため、「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」を開催し、2022(令和4)年6月15日、「医療機関等への行政権限の強化など危機に迅速・的確に対応するための司令塔機能を強化するとともに、強化された機能を活用して一元的に感染対策を指揮する司令塔組織を整備することが必要である。」旨が取りまとめられた。
こうして内閣官房に設置されたのが、内閣感染症危機管理統括庁(以下「統括庁」という。)である。新型インフルエンザ等対策本部(以下「政府対策本部」という。)に関する事務および新型インフルエンザ等対策推進会議(以下「推進会議」という。)に関する事務等を統括庁が所掌すること等を内容とする、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案が2023(令和5)年4月21日に成立し、同年9月1日に統括庁が創設された。
統括庁は、平時には、新型インフルエンザ等対策政府行動計画(以下「政府行動計画」という。)の内容の充実を図るとともに、実践的な訓練の実施と併せて、計画の内容が有事に機能するように各省庁等の準備状況を確認し、改善させる。

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