日本内視鏡外科学会雑誌 28巻3号 (2023年5月発行)

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原著

当院における直腸脱に対するメッシュを用いない手術の治療成績鎌田　陽介 , 松本　辰也 , 小泉　範明 , 藤木　博 , 阪倉　長平 28巻3号 , 2023年5月 , pp.103-111

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◆要旨：当院で5年間に施行した109例の直腸脱手術に対して検討を行った．9例に経会陰的手術を施行し，100例に腹腔鏡下直腸固定術を施行した．経会陰的手術の平均手術時間は68.7±43.6分，平均出血量は43.0±66.5gであった．腹腔鏡下直腸固定術の平均手術時間は145.4±39.1分，平均出血量は29.7±46.9gであった．再発率は経会陰的手術で22.2％（完全直腸脱0％，直腸粘膜脱22.2％），腹腔鏡下直腸固定術で8.0％（完全直腸脱1.0％，直腸粘膜脱7.0％）であった．どちらもこれまでの報告と比較して遜色なく，特に腹腔鏡手術は低い再発率と低侵襲性を兼ね備えた手術と考えられた．

症例報告

完全内臓逆位に対し低侵襲膵頭十二指腸切除術を行った1例園田　智洋 , 保坂　優斗 , 伊地知　徹也 , 又木　雄弘 , 蔵原　弘 , 大塚　隆生 28巻3号 , 2023年5月 , pp.112-119

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◆要旨：症例は65歳の男性．近医で完全内臓逆位を伴う主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断され，経過観察となっていた．初診から4年後，造影CT検査で膵頭部主膵管内に14mmの結節病変を認めたため，当科へ紹介され受診となった．精査の結果，切除適応のある病変と診断し，低侵襲膵頭十二指腸切除術を行った．切除までの操作を腹腔鏡下に行い，再建操作をロボット支援下に行ったが，胆道や血管の走向破格もなく，正位の患者と同様のポート位置と手順で行うことができた．術後合併症はなく経過し，術後10日目に退院した．完全内臓逆位に対するロボット支援を伴う低侵襲膵頭十二指腸切除術の報告例はなく，文献的考察を加えて報告する．

腹腔鏡下尾側膵亜全摘術を行った輪状膵を伴う混合型膵管内乳頭粘液性腺癌の1例安留　龍太郎 , 保坂　優斗 , 伊地知　徹也 , 蔵原　弘 , 東　美智代 , 大塚　隆生 28巻3号 , 2023年5月 , pp.120-126

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◆要旨：症例は61歳，女性．近医で主膵管の拡張を指摘され，当院へ紹介受診となった．画像検査所見から膵体尾部に主病変を持つ混合型膵管内乳頭粘液性腺癌と診断した．悪性病変は門脈右縁には及ばないと判断し，腹腔鏡下尾側膵亜全摘術を施行した．手術では胃十二指腸動脈を膵実質から遊離し，尾側膵の左側へ牽引することで上腸間膜静脈の右側で膵切離を行い，切離断端も癌陰性を得た．今回われわれは，広範囲に及ぶ膵管内乳頭粘液性腺癌に対して膵機能温存の観点から腹腔鏡下尾側膵亜全摘術を行った1例を経験したため，文献的考察を加えて報告する．

尿管坐骨孔ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術の1例中邑　信一朗 , 加藤　憲治 , 中村　俊太 , 瀬木　祐樹 , 岩田　真 , 田端　正己 28巻3号 , 2023年5月 , pp.127-133

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◆要旨：坐骨孔ヘルニアは頻度の低い外ヘルニアで，腸管や卵巣の脱出が多く，尿管坐骨孔ヘルニアの報告は稀である．症例は71歳女性で，6日前から左側腹部痛を認め，当院へ救急搬送された．CTでは左水腎症を認め，拡張した左尿管が坐骨孔に連続し，尿管坐骨孔ヘルニアによる腎盂腎炎が示唆された．抗生剤投与下で経過をみたが，炎症反応の改善は得られなかった．第7病日，MRIで左坐骨孔近傍での尿管の屈曲狭窄残存が確認できたため，ドレナージ目的に尿管ステントを留置し，嵌頓は解除された．腹腔鏡下修復術を施行，左尿管と連続した脂肪組織をヘルニア門である大坐骨孔から引き出し，孔内にプラグ型メッシュを2個挿入した．術後4日目に退院した．

腹腔鏡下に切除した肝鎌状間膜膿瘍の1例上松　由昌 , 海津　貴史 , 大越　悠史 , 坂本　友見子 , 旗手　和彦 , 金澤　秀紀 28巻3号 , 2023年5月 , pp.134-143

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◆要旨：症例は76歳，男性．上腹部痛を主訴に受診，腹部造影CT検査で肝鎌状間膜膿瘍と診断され，抗生剤加療と経皮的ドレナージを施行した．培養でKlebsiella pneumoniaeを認めた．膿瘍は縮小し，ドレナージ5日後にドレーンを抜去し，13日後に退院した．しかし退院116日後に肝鎌状間膜膿瘍が再燃したため，再ドレナージで膿瘍を縮小させ根治手術を行った．手術は腹腔鏡下に膿瘍腔の完全切除を行い，膿瘍腔周囲の肝臓および腹壁の合併切除も行った．肝鎌状間膜膿瘍の報告例はそのほとんどが肝円索を膿瘍の首座とする．本例は，肝円索に膿瘍を伴わず，肝鎌状間膜内にのみ限局する大変稀な症例であり，文献的考察を加え報告する．

腹腔鏡下に切除した多房性囊胞状腫大を呈する虫垂憩室炎の1例二木　元典 , 門川　佳央 28巻3号 , 2023年5月 , pp.144-148

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◆要旨：症例は49歳，男性．腹痛，下痢にて当院に来院した．腹部CTにて多房性囊胞状腫大を呈する虫垂を認めたため，多房性囊胞状腫大を伴う虫垂憩室炎と診断した．血液生化学所見と画像所見にて強い炎症が示唆されたため，早急に腹腔鏡下虫垂切除術を行うこととした．腹腔内を観察したところ，腫瘤を形成した虫垂と膿瘍を認めた．切除標本では，虫垂に多発する憩室を認め，病理組織検査結果では虫垂に仮性憩室が多発し，高度の炎症細胞浸潤を認めた．多房性囊胞状腫大を呈する虫垂憩室炎に対する腹腔鏡手術についての報告は本邦でも少なく，文献的な考察を含めて報告する．

低異型度虫垂粘液性腫瘍に対して腹腔鏡下盲腸切除術を行った8例の検討竹中　俊介 , 八木　康道 , 加藤　洋介 , 大西　一朗 28巻3号 , 2023年5月 , pp.149-154

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◆要旨：低異型度虫垂粘液性腫瘍（low grade appendiceal mucinous neoplasm：以下，LAMN）は外科的切除が治療の第1選択となるが，術式選択において定まった方針が提示されておらず，本邦でも虫垂切除術からリンパ節郭清を伴う系統学的切除術まで様々な報告が散見される．当院では2018年1月から2022年12月までの期間にリンパ節転移・遠隔転移を有さない8例のLAMNに対して腹腔鏡下盲腸切除術を実施した．年齢は40〜83歳（中央値76歳）で，男性2例，女性6例であった．術後在院日数は4〜20日（中央値：5.5日）で，いずれも術後合併症を認めず，2023年1月現在で無再発生存を継続している．腫瘍境界の評価が十分に行われた症例では，腹腔鏡下盲腸切除術で過不足なく，安全な切除が達成できると考えられる．

単孔式腹腔鏡下手術にて摘出した腹腔内金属異物の1例上嶋　徳 , 阿部　仁郎 , 鳥山　裕史 28巻3号 , 2023年5月 , pp.155-160

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◆要旨：患者は68歳，男性．20XX年11月に腰背部痛を自覚し近医を受診した．尿路結石を疑われ当院泌尿器科に紹介となるがCT検査にて尿路結石の所見は認めず，腹腔内異物を認め消化器内科に紹介された．なお，整形外科も受診し腰背部痛は腰椎症の診断となった．腹腔内異物に関しては魚骨などの腹腔内に穿孔した異物が疑われ，当科に紹介となった．CTでは周囲脂肪織濃度の上昇やfree airは認めず，過去に腹部症状もなかった．翌年3月に単孔式腹腔鏡下異物除去術を施行した．画像所見を認めた部位の大網は肥厚しており，肥厚部を含めた大網部分切除とした．切除標本より約11mmの針金状の異物を認めた．異物は成分分析の結果，調理器具などで汎用されるステンレス鋼と推測された．

手術手技

当院での腹腔鏡下幽門側胃切除術における新三角吻合の治療成績近藤　祐平 , 香川　哲也 , 淺海　信也 , 高倉　範尚 28巻3号 , 2023年5月 , pp.161-168

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◆要旨：はじめに：当院では腹腔鏡下幽門側胃切除術における体腔内Billroth I（B-I）再建として新三角吻合を導入しており，治療成績について報告する．方法：2013年1月〜2022年8月までcStage I胃癌に対しLDG，新三角吻合を229例施行し，吻合部関連合併症などの治療成績を検討した．結果：縫合不全と吻合部狭窄をそれぞれ1例ずつ経験した．吻合に要した時間の中央値は21.5分であった．術後1年後の上部内視鏡検査においてRGB分類GradeⅢ以上は，残胃炎2例，残渣貯留25例を認めた．結論：新三角吻合は簡便な手技と虚血域となる十二指腸断端を切離することで安全な吻合を行うことが可能であり，有用な再建方法の1つであると考えられる．

文献抄録

Morbidity, Mortality, and Pathologic Outcomes of Transanal Versus Laparoscopic Total Mesorectal Excision for Rectal Cancer Short-term Outcomes From a Multicenter Randomized Controlled Trial 28巻3号 , 2023年5月 , pp.170-171

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目次 28巻3号 , 2023年5月 , pp.101

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欧文目次 28巻3号 , 2023年5月 , pp.102

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投稿時のチェックリスト 28巻3号 , 2023年5月 , pp.169

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編集後記今村　清隆 28巻3号 , 2023年5月 , pp.172

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　2022年11月に本誌編集委員を拝命しました四谷メディカルキューブの今村清隆と申します．2か月に1回の編集会議にまだ2回しか参加していない新米ですので，現時点で読者の皆様との距離がもっとも近い編集委員といえます．このような状況で，私見ではありますが，本雑誌の3つの特徴を述べさせていただきます．

　第一に，内視鏡外科における手術中の工夫を重視していることが挙げられると思います．珍しい疾患を経験しただけでなく，手術の方法を，写真やイラストを用いてわかりやすく示す必要があります．本雑誌は私にとっても一番のお気に入りです．何よりいいのが複数の写真を組み合わせて「図1a, b, c」とすれば，1枚と認められることです．百問不如一見，綺麗な手術写真やイラストで掲載を勝ち取りましょう．自ら描いた絵に自信がなければイラストレーターの友達を探しましょう．

基本情報

日本内視鏡外科学会雑誌
28巻3号
(2023年5月発行)

電子版ISSN：2186-6643 印刷版ISSN：1344-6703 日本内視鏡外科学会

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