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I 誰のための権利か?
1 「子どもの権利」の特殊性
「国民は,すべての基本的人権の享有を妨げられない」(日本国憲法第11条)。日本国憲法は,基本的人権がすべての人に保障されることを明示している。当然ながら,ここに子どもも含まれている。「子どもの権利」とは,子どもの基本的人権のことである。しかし,あえて「子どもの権利」と分離されている背景には,子どもが大人と同様の権利主体性を前提としながらも,その実現において固有の困難を抱えているという事情がある。
子どもは成長発達の過程にあり,生活の多くを家庭,学校,施設など大人が構成する制度空間のなかで過ごしている。そのため,権利侵害を受けても自ら異議を申し立てることが難しく,また,自身の意見を形成・表明する機会そのものが制限されやすい。さらに自らがどのような権利を有しているのかを知らなければ,権利を行使しえない。つまり,大人が子どもの権利を自律的に保障しなければ,子どもは権利行使の主体となりえないという特殊性が存在する。
2 本稿の目的
2023年に施行されたこども基本法は,子どもの権利に関する包括的な法律であり,子どもの権利条約を背景として,子どもの意見表明権や参加の重要性を広く規定している。以降,こども基本法を根拠にして子どもの権利保障に関する制度整備が進められつつある。しかし,権利が制度上存在することと,子ども自身が権利の主体として経験し行使できることとの間には,依然として乖離が存在し,課題となっている。
とりわけ,子どもは大人との非対称な権力関係のなかに置かれており,自らの意見を形成し,表明し,それが適切に考慮されるためには支援と媒介が必要となる。そのため,子どもの権利保障を実質化するためには,大人による一方的な意見聴取にとどまらず,子どもの声を正統なものとして支え,翻訳し,制度へ接続する仕組みが求められる。
そこで本稿では,子どもアドボカシーおよび子どもの権利擁護機関に着目し,それらが個別的な権利救済のみならず,子どもの権利をモニタリングすることによって課題を可視化し,さらに手続き保障を通じて制度改善へ接続する構造的役割を有していることの意義を検討する。その上で,「誰のための権利か?」という問いを通して,子どもの権利保障におけるアドボカシーと権利擁護機関が担う役割について考察することを目的とする。

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