投稿論文 症例研究
コロナ禍における強迫症の中年期女性の心理療法過程 遠隔認知行動療法の実践を通しての考察
永田 忍
1
1就実大学
キーワード:
強迫症
,
インプローシブ療法
,
認知行動療法
,
精神療法過程
,
疾病の流行
,
COVID-19
,
遠隔精神医療
Keyword:
Psychotherapeutic Processes
,
Cognitive Behavioral Therapy
,
Obsessive-Compulsive Disorder
,
Implosive Therapy
,
COVID-19
,
Mental Health Teletherapy
,
Epidemics
pp.407-415
発行日 2024年6月5日
Published Date 2024/6/5
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世界中が新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験し,多くの人々がメンタルヘルスに何らかのネガティブな影響を受けた。不潔恐怖を伴う強迫症のクライエントもその例外ではない。国内外の文献を確認してみると,強迫症の症状が悪化したという報告もあれば,悪化しなかったという報告もあり,見解はさまざまである。また,このような状況の中,国内外では遠隔システムを活用した認知行動療法が急速に発展している。筆者は,コロナ禍で不潔恐怖を主症状とした強迫症を発症し,通常の日常生活が困難となっていたクライエントに対して遠隔認知行動療法を担当した。その結果,日常生活で支障をきたしていた多くの行動が可能となり,終結に至った。本事例は,強迫症に対する遠隔認知行動療法の実践におけるスーパービジョンの効果研究の一環として行われた。強迫症のクライエントに対して,遠隔で認知行動療法を実践する際は,対面時と同様に(1)ミクロ・マクロの両視点からクライエントの行動分析を丁寧に行い,クライエントが認知行動療法を実践しやすい環境を設定していくこと,(2)正しく技法を使うことばかりに偏るのではなく,セラピストのパーソナルな自己が目の前のクライエントにどのように影響するかを考えながら実践することとともに,(3)遠隔だからこそ利用できる資源を有効に活用していくことが重要である。
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