薬剤感受性検査データ(MIC)の読み方と耐性菌検査 グラム陰性菌編
9.Salmonella spp.
阿部 教行
1
1公益財団法人 天理よろづ相談所病院 臨床検査部
pp.928-932
発行日 2025年9月15日
Published Date 2025/9/15
DOI https://doi.org/10.32118/mt53090928
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耐性機序,疫学的背景
1)キノロン耐性
被検株は表1の青枠で示すように,レボフロキサシン(LVFX)およびシプロフロキサシン(CPFX)に対し,それぞれ2μg/mLおよび1μg/mLのMICを示しており,米国Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)が定めるSalmonella spp. のブレイクポイントに基づいて「耐性」と判定される1).キノロン系抗菌薬は,細菌のDNA複製や転写に不可欠な酵素であるDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼⅣを標的とする合成抗菌薬である.これらは構造的にオールドキノロン(例:ナリジクス酸)と,キノロン環にフルオロ基を導入したフルオロキノロン(例:LVFX,CPFX)に分類され,臨床で一般的に使用されるのはフルオロキノロンである.キノロン耐性の主要機序は標的酵素の構造変化によるもので,特にgyrAやparCといった遺伝子に点変異が生じることにより耐性化する.gyrA遺伝子の83位または87位のアミノ酸置換はフルオロキノロン耐性の主因として広く知られており,MIC上昇と密接に関連する2).

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