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速報
高気圧酸素治療
-――現状と今後の可能性
Hyperbaric oxygen therapy
――Its current states and future developments
合志 清隆
1
Kiyotaka KOHSHI
1
1西日本病院脳神経外科
pp.847-848
発行日 2023年3月11日
Published Date 2023/3/11
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28410847
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高い圧環境の中で酸素吸入を行う高気圧酸素治療(hyperbaric oxygen therapy:HBO)は救急・集中治療のひとつとして種々の疾患に試みられてきた.この治療が科学的根拠を持って注目されるようになった契機は,1956年のHBOを用いた心臓外科手術の成功であろう.その後,人工心肺装置の開発と改良が進むと,心臓・大血管外科でのHBOの興味は薄れる一方で,1960年代になると一酸化炭素(CO)中毒,ガス壊疽,脳虚血や四肢の動脈閉塞,さらに心筋梗塞や頭部外傷などが治療の対象となった.わが国では2000年ごろまでに脳神経外科や救急施設を中心にHBOの導入が進んだ.しかし近年,救急・集中治療としてHBOの認識が様変わりしている.専門の国際学会の調査では,2020年7月の時点で米国に1,300カ所のHBO施設が存在しており,その大多数が救急医療用として導入されながらも24時間体制での運用は78カ所のみと,この20年間で極端に減少していた1).その要因として,適応疾患の患者数が限られたもので,特殊環境下での集中治療でありながらもその関連の研究と装備が十分ではないことが述べられている.わが国でも同様の傾向であり,専門機関の2021年の調査によればHBO施設は460カ所で,この10年間で160施設が減少していた2).本稿では,救急・集中治療でのHBOの治療効果について科学的根拠を述べると同時に,今後,HBOが期待される領域,もしくは疾患についても紹介する.
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