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医療におけるフットケアの目的は,足を健康に維持し歩行機能を守ることであり,足の手入れに関する日常的な指導から,糖尿病や重症虚血肢に伴う足病変の集学的治療まで幅広い領域が含まれている.欧米諸国では古くから足や靴に関わるさまざまな専門家が存在しており,フットケアの歴史が長い.ドイツでは予防的フットケアにあたるフスフレーゲという技術が発達しており, また2002年から医療的フットケアを行うポドローゲが国家資格として認められ,医師と連携して治療にあたっている.アメリカでは足を専門に扱う足病医(Podiatrist)が存在し,足に関するケアから手術まで幅広い診療を行い,糖尿病性足病変のゲートキーパーの役割を担っている.日本でも超高齢社会の到来,生活習慣病の増加に伴い,足に複数のトラブルをもつ高齢者や糖尿病性足潰瘍を発症する患者の増加が問題となり,近年フットケアの重要性が認識されてきた.しかし,足の健康を維持するための社会的なシステムは,ごく一部を除いてまだ機能しているとはいえない.現在の日本では,何らかの足部の異常に気づいた患者はまず皮膚科外来を受診することが多いため,皮膚科医は日常的に多数の足疾患を診療している.しかし皮膚科医が単独で治療することに難渋する局面は非常に多い.とくに糖尿病や重症下肢虚血に伴う足潰瘍・壊疽の治療にあたっては,多数の科の医師,複数の医療職との緊密な連携が不可欠である.また胼胝・鶏眼や巻き爪などを主訴として受診した患者に対しても,その原因である足の変形や機能異常に着目すると,靴の購入や装具の処方,運動療法の必要性が生じてくるため,これに対応する多数の専門職との連携が要求される.さらに近い将来には訪問診療の拡大に伴い,看護・介護職に携わる人々にケアに関して指導したり,協力を依頼したりする機会が増えることも予想される.本稿では,大学附属病院や総合病院でのフットケア外来に加え,在宅診療支援診療所で訪問診療に携わっている筆者の立場から,現在のフットケア診療の取り組みに関して述べ, 他診療科の医師・看護師やコ・メディカル,さらに医療従事者に限らないさまざまな職種との連携のあり方について解説したい.(「はじめに」より)
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