特集 小児の心身症~いま改めて心身相関を考える~
総論:診療を巡ってあれこれ
心身症は予防できるか?―心身一如の視点から
元田 玲奈
1
MOTODA Lena
1
1Raffles Japanese Clinic(ラッフルズジャパニーズクリニック)
pp.931-934
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000950
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心身症予防のパラドックス
「心身症は予防できるか?」という命題は,実はいささか矛盾をはらんでいる。実際,心身症にならない人はいる。この人たちは心身症という疾患が存在することすら知らないことも多く,予防という概念とは無縁である。すなわち,「心身症にならないようにしよう」と意識しないで生きていられる人こそ,心身症にならない,というパラドックスである。彼らに共通して言えることは,生理的欲求に基本的に素直に従っている点である。お腹が空いたら食べる,眠たくなったら寝る,排泄したくなったら排泄するなど,結果的に身体が無理しない状態をほどほどに保てている。さらに,自分が「不快」と感じるものが入ってくるのをシャットアウトするのが上手く(たとえば「聞き流す」,「考えない」),入ってきたとしても,好きなことや得意なこと,やりたいことや夢中になれることを活用することで,緊張感や不快な気持ち,悩みや疲労を抱え続けないようにしている(たとえば「忘れる」)。「抱え続けないようにしている」と書いたが,実際には結果的にそうなっているだけのことで,お酒を飲んだり,カラオケに行ったり,庭仕事したり,自転車を漕いだり,朝寝坊をしたりして「身体の気持ちよい」を大事にすれば,自ずと「心も気持ちよくなる(回復する)」という当たり前を,日々実践できているのである。
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