特集2 心臓性浮腫とトルバプタン ~長期の体液管理における役割~
5.イベント抑制効果:EVEREST試験との違い
有田武史
1
,
大村淳一
2
1小倉記念病院循環器内科 副部長
2小倉記念病院循環器内科
pp.775-781
発行日 2014年2月1日
Published Date 2014/2/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201402775
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トルバプタンはバソプレシン受容体のうちV2受容体のみを阻害し,水利尿を引き起こすことで全身の浮腫を解消し,心不全を改善する。心不全の病態の基礎は神経体液因子の変調であり,レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系(renin-angiotensin-aldosterone system:RAAS),交感神経系(sympathetic nervous system:SNS)に加えてアルギニン‐バソプレシン(arginine vasopressin:AVP)系の活性化がその病態の根幹をなすことは広く知られている。交感神経遮断剤,レニン‐アンジオテンシン系阻害剤はいずれも心不全患者の予後を改善することが示されたのに,EVEREST(Efficacy of Vasopressin Antagonism in Heart Failure Outcome Study with Tolvaptan)試験においてV2受容体拮抗剤であるトルバプタンは予後改善効果を示せなかった 1)。しかしながら,Konstamらの報告に反してトルバプタン投与によりイベント抑制効果があったとする報告もいくつか散見される。我々の自験例も含めて,トルバプタンのイベント抑制効果につき検討する。