特集 薬剤性消化器疾患の診療
巻頭言
滝川 一
1
1帝京大学医療技術学部
pp.673-674
発行日 2020年6月20日
Published Date 2020/6/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000001192
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薬物による有害事象(adverse drug reaction;ADR)は,臓器によって「薬剤性」と「薬物性」という二つの接頭語が用いられている.本来「drug」の日本語は「薬物」と思われるが,わが国では「薬剤性」と呼ばれる臓器障害が多い.また「injury」の日本語も本来は「傷害」とすべきと思うが,多くの臓器で「障害」が用いられている.薬物性肝障害(drug‒induced liver injury;DILI)についても,私が医師になりたての頃は薬剤性肝障害と呼ばれていたが,現在では厚生労働省で使用する用語も含めて薬物性肝障害となっている.以前,ジクロロメタンによる肝障害症例を経験したことがある.2012 年以降に印刷業で多発した1,2‒ジクロロプロパンやジクロロメタンによる胆管癌も,広い意味では薬物による消化管疾患に含まれると考えられるが,近年,海外でも問題視されている健康食品によるDILI も含め,「薬物性」の接頭語のほうが適切な気がする.
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