投稿論文 短報
偶発性低体温症およびアルコール性ケトアシドーシスに続発した急性重症膵炎患者の治療経験
吉田 美伽
1
,
星 拓男
1茨城県立中央病院 麻酔科・集中治療部
キーワード:
アシドーシス
,
飲酒
,
血液ガス分析
,
水素イオン濃度
,
膵炎
,
低体温症
,
Lactic Acid
,
ケトアシドーシス
,
腹部CT
Keyword:
Acidosis
,
Alcohol Drinking
,
Hydrogen-Ion Concentration
,
Hypothermia
,
Pancreatitis
,
Blood Gas Analysis
,
Lactic Acid
pp.312-316
発行日 2020年3月10日
Published Date 2020/3/10
DOI https://doi.org/10.18916/J01397.2020199081
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症例は76歳男性で、日本酒1日3合の飲酒歴があり、搬送数日前より食事をほとんどとらず飲酒していた。昼頃から倦怠感と全身の脱力により体動困難となり、当院へ搬送された。当院到着時の血圧は66/33mmHg、心拍数87beats/min、SpO2 90%(室内空気)、腋窩温30.9℃であった。低体温による循環不全と考え、加温輸液と高流量加温加湿酸素の投与を開始し、ICUに入室した。低血糖に対しては適宜ブドウ糖を投与した。来院4時間後には体温は36℃まで復温したが、代謝性アシドーシスは遷延していた。意識は清明であり、腹痛・圧痛はなかった。アルコール多飲歴とアニオンギャップ開大性のアシドーシスの所見からアルコール性ケトアシドーシスと考えられた。第2病日になるとアルカリ化剤の投与が奏効しアシドーシスは改善したが、38℃の熱と上腹部痛が出現し、徐々に酸素化が悪化したため気管挿管し人工呼吸管理を開始した。血液検査ではアミラーゼとリパーゼが上昇しており、腹部単純CTで膵周囲の脂肪織濃度の上昇と液体貯留を認めたため急性膵炎と診断した。ガイドラインとCT gradeから重症と判断した。膵炎に対して絶食管理とし、大量輸液、抗生物質、タンパク分解酵素阻害薬を投与した。一時期昇圧薬を要したが、徐々に呼吸状態・循環動態が安定したため第5病日に抜管し、第8病日に一般病棟へ転棟した。
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