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人工関節ナショナルレジストリーは,北欧に端を発し,現在では多くの国々で実施されている。各国における患者や疾患の全体像が把握できるだけでなく,インプラント情報からは各インプラントの使用量や生存率,手術情報からは手術方法のトレンドや問題点などが年単位で解析され報告されている。これらの年次ごとの解析は,医師,手術施設およびインプラント企業にフィードバックされ,安全な手術手技,より良いインプラントの開発など様々な点において有用な情報を提供している。日本人工関節登録制度においても,人工股関節置換術,人工膝関節置換術,人工肩関節置換術が登録さており,2017年12月末までに合計21万症例という膨大なデータが蓄積され,日本人工関節学会のホームページ上に年次報告書が毎年掲載され公開されている。各国のナショナルレジストリーの解析結果が共有され現状の人工関節手術やインプラントに関して議論する場としてInternational Society of Arthroplasty Registers(ISAR)が発足し,年1回定例会合が開催され,わが国からも参加している。ナショナルレジストリーデータは,各国の規制局や企業においての薬事施策にも必須の資料として認識されてきている。金属対金属人工股関節インプラントのような極めて重大なインプラントに起因する問題を二度と引き起こさないためだけでなく,新規インプラントの承認認可,薬事と保険償還,市販後のPDCAサイクルによる医療機器改善などなど,ナショナルレジストリーは産官学のどの立ち位置においても必須のデータ集積・解析制度として利用されつつある。さらに,ナショナルレジストリーは,近年精力的に進められているクリニカル・イノベーション・ネットワークの整備事業と合致し,極めて多くのレジストリーが構築されてきている。
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