特集 網膜静脈閉塞症の最新のとらえ方
序論
門之園 一明
1
1横浜市立大学大学院医学研究科視覚再生外科学
pp.1419-1419
発行日 2017年11月5日
Published Date 2017/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000202
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今月号の特集は,“網膜静脈閉塞症の最新のとらえ方”です。この疾患は,実に不可解な要素を多く秘めています。もともと,血管閉塞症は全身に隈なく生じる疾患でありますが,そのほとんどが動脈閉塞です。静脈閉塞症は,胸郭症候群,下肢静脈血栓症,肺静脈閉塞症など極めて限られており,発症頻度は高くありません。しかし,網膜静脈閉塞症は異なります。眼球内では,静脈は頻繁に詰まり,重篤な視機能障害を生じるのです。その理由は,網膜静脈が視神経・網膜という非常に限られた容積の組織内を走行するゆえ,必然的に生じ得る疾患だからでしょう。もし,網膜静脈が網膜外をゆったりと走行していたら,病気は変わっていたかもしれません。ゆえに,網膜静脈閉塞症は,糖尿病網膜症に次いで多い網膜血管障害です。全身合併症との関係,緑内障との関連もある日常よく遭遇する疾患でもあります。これまで,多くの研究者は眼底所見,蛍光眼底造影検査,自動視野計検査を応用して,さまざまな観点から本疾患を解析してきました。治療はどうでしょうか。網膜静脈閉塞症に対しては,従来内服治療,光凝固,ステロイドなどが主流であったと思います。また,硝子体手術も盛んに行われていました。しかし,近年抗VEGF 薬の登場により,その治療内容や成績は様変わりしています。網膜静脈閉塞症のとらえ方が急速に変わりつつあるのです。
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