連載 特集アドバンストコース
『臨床画像』Vol.33,11月号特集 脳脊髄液動態異常の病態と画像所見:新しい概念と最新の診断・治療
西山 健一
1
1新潟医療センター 脳神経外科
pp.390-393
発行日 2018年3月26日
Published Date 2018/3/26
DOI https://doi.org/10.18885/cij.201834030390
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中枢神経系はその80%が水分からなり,他臓器と異なる循環があると信じられてきた。いわゆる「第三循環」と称されるこの髄液循環に関して,今日さまざまな疑問が投げかけられ,新たな知見が集積されている。特集号の掲載論文中に幾度となく紹介されるGlymphaticsystemは,そのkey roleの1つと考えられる。「第三循環」の考えが成り立たなくなったのは,脳室やくも膜下腔の髄液動態だけでは,病理が説明できない疾患に遭遇してきたのが理由の1つである。特発性正常圧水頭症がまさにそれであり,脳脊髄液(cerebrospinal fluid;CSF)の代謝障害,あるいはターンオーバーの低下が病態に深く関与していると推察されている。脳脊髄液の代謝障害は脳間質液(interstitial fluid;ISF)の代謝障害も誘発すると考えられ,これによりアミロイドβやリン酸化タウ蛋白などの代謝産物が脳内に蓄積されるわけである(2017年11月号特集本文p1293参照)。水頭症の外科治療である髄液シャント術には,余剰髄液を減少させる主目的があるが,神経毒性蛋白の蓄積を軽減させる別の機序も働いているのかもしれない。
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