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1.は じ め に
第49回日本人工関節学会は,山本謙吾会長(東京医科大学)のもと,2019年2月15日(金)~16日(土)に東京都新宿の京王プラザホテルで開催された.2020東京オリンピック・パラリンピックを翌年に控え,近接する東京都庁舎からもその熱気を先取りするような息吹が感じられ,学会も大盛況であった.
本学会のテーマは「欲速則不達」であった(図1).論語の一節「速やかならんと欲することなかれ.小利を見ることなかれ.速やかならんと欲すれば則ち達せず.小利を見れば則ち大事成らず.」というくだりを引用したテーマである.次々と市場に出回る新規材料を,功を焦るあまり十分な検討をしないままに患者に適応すれば,結果的には多くの不利益が生じてしまう恐れがあるという戒め,人工関節学の進歩と発展を目指す本学会において,基本に立ち返り,じっくりと人工関節の適応,材料,手技そしてリハビリテーションまでを学ぶ機会となるような学会をめざしたいとの思いが込められている.
実際に研修講演として「人工関節のエキスパートになるための基礎知識」が企画され,肩,肘,股,膝,足の各関節の機能解剖のほか,人工股関節,人工膝関節の術前計画,人工股関節全置換術(THA)ステムの機種選択,人工関節のためのセメントテクニックと人工関節学をこれから専門にしていく若い先生方のみならず,中級・上級者の先生方にとってもしっかりと身につけておきたい基礎的・臨床的な基本事項を整理・再確認することができる非常に有意義な9つの講演内容であった.また,ディベートセッションとして「THA前方アプローチvs THA後方アプローチ」,「CR TKA vs PS TKA」,「スタンダードステムvsショートステム」,「ポリエチレン摺動面vsセラミック摺動面」が企画され,古くて新しい課題,安直に結論を出せない課題について第一人者の先生方の熱いディベートが繰り広げられ,人工関節を行うにあたって選択肢の背景を理解するよい機会となり,「欲速則不達」のテーマに沿ったすばらしいプログラム構成であった.
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