特集 内科医に求められる他科の知識―専門家が伝えるDo/Don’t
第3章 耳鼻咽喉科
TOPICS
難聴と認知症
内田 育恵
1,2
1愛知医科大学耳鼻咽喉科
2国立長寿医療研究センター耳鼻咽喉科
pp.1867-1867
発行日 2019年9月1日
Published Date 2019/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_naika124_1867
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
近年,認知症と難聴の関連に,社会的な関心が寄せられている.わが国では,2015年1月27日に策定された省庁横断で取り組む「認知症施策推進総合戦略~新オレンジプラン~」のなかで,難聴が認知症の危険因子の一つにあげられた.2017年7月には,アルツハイマー病協会国際会議(Alzheimer’s Association International Conference:AAIC)2017における「認知症予防,介入,ケアに関するLancet国際委員会」による声明と,同時発表されたLancet誌の論文1)が強いインパクトをもたらし,即日世界中の多くのメディアで扱われた.その報告では,科学的根拠を入念に評価して選出した認知症発生率に関与するリスク要因は,難聴,低教育,高血圧,肥満,喫煙,うつ,運動不足,社会的孤立,糖尿病の9要因で,この9つのリスク要因への曝露をなくすことができれば約35%の認知症を減らすことができると推計した.9つのリスク要因のうち,影響が最も大きいのは「中年期以降の難聴」で,もし回避することができれば,約9%の認知症を減らすことができると報告している.また,この論文の筆頭著者であるUniversity College London(UCL)のGill Livingston教授らが2017年10月に来日して取材を受け,新聞報道されたことから,国内においても “認知症と難聴” が一躍注目されることとなった.
© Nankodo Co., Ltd., 2019