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がん医療が時代とともに発展していき,新たな治療法や薬剤が開発され,治療がますます多様化する中,がん看護の果たす役割も拡大しつつある.がん医療における看護の役割も多様化しており,質の高い医療の提供には,各領域における専門性の高い看護技術を用いた治療支援やケアの提供が必須となっている.看護の役割の一つとしては,患者の状況に応じて,患者の安全,安楽を考慮した質の高い看護技術の提供が求められている.
たとえば,抗がん薬の静脈穿刺技術で考えると,これまでは医師が医療処置として静脈穿刺を行ってきたが,現在では看護師も抗がん薬の静脈穿刺を行う機会が増えてきている.その際には,私たちは安全に確実な穿刺を心がけるのみならず,穿刺時の痛みを極力少なくするという患者さんの安楽を考慮した看護技術の提供が求められる.穿刺技術のエキスパートは,患者が安心して治療が受けられるように,声かけなど心理的なサポートや治療環境の整備も行っている.また,患者ごとに血管の状況をアセスメントし,治療薬に応じた最適な血管を選択する.そして,さまざまな患者の身体の個別性をとらえられるアセスメント力,少ない穿刺回数で確実に血管をとらえる技,痛みを最小限にとどめる技や血管外漏出を予防できるような技をもっている.そういった臨床現場のエキスパートの技の本質を改めて見直してみると,がん看護に関連した看護技術について,エビデンスを再考することや,臨床知を言語化していく必要性を考えた.
しかしながら,エビデンスは言語化ができるが,一方,臨床での技においては,それぞれのエキスパートが蓄積している臨床知はあるものの,エビデンスとして確立していないケースもある.そこで,今回は,各方面のエキスパートに協力をしてもらい,これまで蓄積してきた臨床知を文章化し,多くの読者と技を共有できるかどうかを検討した.
がん看護技術とは,病態や治療の背景をふまえて,患者の病態や置かれる状況をアセスメントして,適切で洗練された技術を提供していくことだと考える.今回の特集を通して,がん看護の第一線で活躍しているエキスパートに,日ごろ高度実践に活用している技術をできる限り現場に還元してもらい,がん患者さん一人ひとりに応じた安全で安楽かつQOLが高まるような最善の看護技術が臨床現場に拡がることを期待している.
2023年5月
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