発行日 2017年6月1日
Published Date 2017/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2017277135
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60歳女。左眼球の内側下方偏位と違和感を主訴とした。甲状腺疾患の既往歴はなく、約6年半に複視を自覚し、内服加療で症状が改善した経緯があり、主訴にて再度受診した。脳MRI T2強調画像の軸位断では左眼球が著明に内転しており、FLAIR画像の冠状断では左眼の内直筋、下直筋と思われる筋の肥大が示唆された。血液検査所見ではサイロトロピン(TSH)値、遊離サイロキシン値は正常であったが、TSH受容体抗体、TSH刺激性受容体抗体が著しい高値を示し、症状再燃後の経過が比較的急速であったことから、活動性のある中等症から重症の甲状腺眼症と考えてbetamethasoneを含めた治療を行ったところ、左眼の眼位の異常は残存するも違和感は消失した。複視を訴える症例では、甲状腺疾患の既往歴や甲状腺機能の異常がなくても甲状腺眼症の可能性に留意する必要があると考えられた。
©Nankodo Co., Ltd., 2017