発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2006012507
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千葉大学医学部附属病院では2003年6月から電子カルテの稼働を開始し,強制的な一斉移行ではなく,紙カルテと並行稼働をしつつ移行を行うこととした.本稿では稼働開始2年を経過しての入力状況とユーザーの声をもとに,電子カルテの効果と課題をまとめた.外来での電子カルテ入力率は,開始当初の20%から順調に増加し,本年(2005年)5月には65%に達している.入院でも同様に,入力率は11%から69%に増加している.利用率は診療科によって大きな差があり,本年5月の外来入力状況では,34診療科中27科で半数以上が電子カルテを利用していた.電子カルテの導入によってよくなった点としては,情報共有に関する評価が高く,カルテが読みやすくなった.カルテ待ちが減ったなどの評価も得ている.臨床研究や医療安全への本格的な応用はまだであるが,期待は大きい.一方,電子カルテを使用しない,もしくは使いにくい理由として,ユーザー側からは, 1)処理速度が遅い, 2)端末数の不足, 3)画像機器との接続が不十分, 4)スケッチを描きにくい, 5)過去を振り返るときに不便, 6)患者の顔をみながら記録ができない,などの点が多くあげられた.文字入力主体の診療科では電子カルテへ移行したが,図を活用する診療科ではまだ利用率が低いままにとどまっている.後者の科でも診療文書などの便利な機能は利用されており,十分な利便性を提供できれば移行すると考えられる.今後,電子カルテの利用率を上げていくには,処理速度を向上させるとともに,科ごとの特殊性に配慮することや,紙カルテでは実現困難な機能を提供することが大切と考えられた
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