発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2004248920
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27歳女.19歳時に右肘部管症候群と診断され,King法を2回施行されたが症状再燃し,21歳時に再び症状再燃したため当科を受診し再々手術を行った.尺骨神経周囲に軽度癒着がみられたが,神経の除圧は十分であった.しかし術後3日目に症状増悪し,complex regional pain syndrome(CRPS) type Iと診断した.以後,種々の加療を行うも次第に症状は増悪した.27歳時,転倒して右足関節三果骨折を受傷したため再入院し手術治療を行ったが,疼痛および臥床による膝・足関節の拘縮から歩行不能となり,右下肢もCRPSと診断した.術後5ヵ月時,朝食後に突然胸部不快感および呼吸困難が出現し,右肺動脈主幹部に血栓を認めた.血栓溶解および血栓除去を試みるも無効であり,カテーテル検査室内にてショック状態となったため,緊急開胸手術を施行し血栓の摘出を行った.術後,鎮痛薬の使用量は格段に減少し,症状の改善がみられた.右上下肢CRPSによる左側視床血流低下状態に肺塞栓によるショックおよび人工心肺を使用した開胸手術という大きなストレスおよびかなりの疼痛刺激が加わることで,青斑核から視床のα1受容体を介してそれまで低下していた視床血流が増加し,症状が軽快したのではないかと推測した
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