膵癌update 2012
総論 膵癌取扱い規約とTNM分類 特に膵後方浸潤と膵外神経叢浸潤の定義について
木村 理
1
1山形大学 外科学第一
キーワード:
局所解剖学
,
筋膜
,
膵臓腫瘍
,
末梢神経系腫瘍
,
門脈
,
TNM分類
,
神経周囲浸潤
,
癌取扱い規約
Keyword:
Anatomy, Regional
,
Fascia
,
Neoplasm Staging
,
Pancreatic Neoplasms
,
Peripheral Nervous System Neoplasms
,
Portal Vein
pp.468-475
発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2012223258
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
『膵癌取扱い規約』(第6版)では膵内胆管、十二指腸、膵周囲組織などのいずれかに膵癌浸潤が陽性な場合はT3となり、癌の浸潤が隣接する大血管、膵外神経叢、他臓器のいずれかに及ぶものはT4となる。膵外神経叢浸潤(PL)は日本人のこれまで作り上げてきた「膵癌分類の心」なのである。膵後方浸潤(RP)かPLかでStage IIIかStage IVかのStage分類がかわってくる。したがって、両者がきちんと定義されていないとStageもきちんと分類できないことになる。われわれは、これまで膵鉤部などを指標とする可能性も考えてきたが、鉤部は長さや存在部位の症例による変異が大きく、RPとPLの指標となりえない。また膵外神経叢は膵鉤部の先端から突然生えてくるのではなく、膵鉤部を包み込むように次第に左側へ向かうほどに神経叢が厚くなって、膵鉤部が途切れたところで神経叢のみとなるのである。この二つの事実から、神経叢が膵鉤部より左から始まると単純に決定できるものではないことが理解できる。われわれは癌が門脈右縁のラインより右までの浸潤をRP、これよりさらに左側への浸潤をPLつまり膵頭神経叢第I部あるいは第II部の浸潤と定義するのがよいと考え提唱した。
![](/cover/first?img=J00393.2012223258.png)
©Nankodo Co., Ltd., 2012