あなたにとって作業療法とは何ですか？

水の如し

　私にとって作業療法とは何かと考えたとき，まず頭に浮かんだのはこの言葉です．『老子』の中に「上善水の如し」という言葉があります．ここでは，理想とする生き方は，水のように万物に利益を与えるが争わず，流れて川となることで低い所に身を置き謙虚であるが，長年の水滴は岩に穴を開けるエネルギーをもつことが説かれています．

　言うまでもなく水は生命の源であり，わが国では蛇口を捻れば衛生的な水を飲むことができます．ただし，日常生活で水のありがたさに気づく機会はほとんどありません．作業療法を知る国民は増えてきていますが，自身や周囲の人々の病などにより知ることがほとんどではないでしょうか．作業療法が関与すべき状況に直面しないと知る機会がない．逆にいうと，作業療法に出会わない人生は幸せであるのかもしれません．