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この編集後記を書いているのが5月上旬ですが,世の中は新型コロナウイルスの話題でもちきりです.このウイルスの感染者は大部分は軽症だけれども,一部の人は急速に呼吸状態が悪化し致命的になります.また無症状の患者でもウイルスを排出し,ステルス的に感染が広がる本疾患は近年話題になったSARSやMERSやエボラ出血熱などのウイルスよりも全世界に大きなインパクトを与えています.全国に緊急事態宣言が宣言され,人の接触を8割減らすという目標が立てられ,3密を避けるということで外出や就労も大幅に制限され,経済活動への影響も甚大です.学会も会議も講演会も全て中止/延期あるいはweb開催となり,私も出張が激減してある意味健康的な生活を送れるようになりました.不急の手術は行わないということで手術数にも制限がかかりましたが,悪性腫瘍をメインで扱っている当科ではまだまだ忙しい日々を送っています.日常的に医療崩壊・院内感染という言葉が飛び回り,スタッフの一人にでも感染者が出れば通常診療の継続も難しくなりますから,可能な限りの対策を講じながら感染者が出ないようにとひたすら祈るしかない毎日です.世界中で囲い込みと流通が滞ることによりマスクやガウンなども品薄になり,明日の手術にも不安を抱えています.
我々の社会がこのような感染症に遭遇するのは久々のことで,今回のコロナウイルスの件は高度にグローバル化された世界における感染症の恐ろしさを我々に再認識させました.地震や台風などと同様にまさに“災害”と呼ぶべき状況において,PCRなどの検査体制や感染症患者に対する病床の手配など,我が国の医療の脆さも浮き彫りになっています.執筆時には自粛の効果もあって感染の広がりはやや抑えられつつあるようですが,元の日常に戻るのはかなり先になるのではという予測もあります.今後,より性質の悪いウイルスが発生する可能性もあります.今回の教訓を生かして未知の感染症に対する我々の社会の“危機管理能力”を向上させる必要があると感じました.
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