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多くの先生がたにとってアリストテレス,カント,ベンサム,ミルなどは高等学校の倫理で習った(試験のために覚えた?)名前かと思いますが,最近日本で脚光を浴びていたハーバード大学の哲学者マイケル・サンデルの著書を読むと,彼らが実にさまざまな角度から“何が正義か”を考えていたことが今更ながらに伝わってきます.道徳主義,自由主義,功利主義などという単純な言葉では言い表せないほど深遠な思索がなされています.サイエンスとしての医学に関わっていると,ともすれば何事においても真理は1つであるという錯覚を抱きつつ診療を行ってしまいがちかも知れません.しかしながら,叡智の限りを尽くして偉大な哲人たちが“正しいこと”を模索してもその答えは1つではなく,時には相反する考え方が受け入れられてきた歴史を考えると,医療が人間の営みである限り,医療における正義も多様であり得ると思います.ただし,医療においてこのような問題を考える場合,そこには理論を構築する基になる事実があります.その礎として論文が大変貴重な存在であることは間違いありません.こう考えると,論文ひとつを書くのにも,審査するのにも自ずと力が入ります.
私が本誌編集委員を拝命してから1年になろうとしています.その間に投稿された多くの優れた論文に接して私自身も随分と勉強させていただきました.日々の忙しい診療の合間を縫って論文を仕上げるというのは困難な作業です.それを突き動かしているのは内から湧き出る医学への情熱と理解しております.誌面の都合上,投稿論文のすべてを掲載できないのは残念なことですが,本学会誌が多くの会員の診療・研究・教育に広く役立っていると信じております.今後も編集委員として誠意をもって本誌に投稿してくださる先生がたと本学会誌をより良くしていきたいと思っております.
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