別冊春号 2019のシェヘラザードたち
第21夜 Pitfall! ただの気道狭窄じゃない!!—こんなに怖い甲状腺がん気管内浸潤
平島 潤子
1
1がん研有明病院 麻酔科
pp.127-133
発行日 2019年4月19日
Published Date 2019/4/19
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200071
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日本麻酔科学会麻酔関連偶発症例調査(2009〜2011年)によると,導入時気道確保操作不適切を原因とする高度低酸素血症は66例(発生率0.15%/1万症例),心停止4例(発生率0.009%/1万症例)と報告されている。また,術前合併症で気道狭窄を有する症例の高度低酸素血症発症数は23例(0.052%/1万症例),心停止は7例(0.016%/1万症例)であった。これは多くの麻酔科医が日夜苦労して気道確保に取り組んでいる成果であるが,その一方で,いまだに該当症例が存在することは,われわれ麻酔科医が常にこのリスクにさらされていることを示している。
甲状腺がん気管内浸潤の危険性は,多くの気道狭窄に関連する資料に剝離出血に注意との記載があるものの,詳しく言及したものは少ない。そのため具体的なイメージが薄く,それがベテラン麻酔科医の危機管理にPitfallとして影をおとす。
本稿では,甲状腺がんにより気道狭窄をきたした症例において,気管内浸潤腫瘍の存在の怖ろしさを改めて実感させられた経験を紹介する。
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