特集 ICUにおける神経内科
Part 1 神経症候に対する診断と治療アプローチ
1. 意識障害への診断アプローチ—徹底的な鑑別診断と二次性脳損傷の予防
江川 悟史
1
Satoshi EGAWA
1
1朝霞台中央総合病院 脳神経外科
pp.741-753
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200317
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意識障害の診療で重要なことは,“徹底的な鑑別診断”と“二次性脳損傷の予防”である。つまり意識障害の原因となる“一次性脳損傷の正確な診断”と,“ABCの安定化(脳の酸素需給バランスの確保)”が重要である。
意識障害の原因は,器質的な障害と機能的な障害に分けられる。器質的な障害には脳卒中,外傷などがあり,機能的な障害にはてんかん,血糖値異常,ビタミンB1欠乏,低酸素血症,電解質異常など代謝性のものが含まれる。AIUEOTIPS(表1)として鑑別疾患を列挙し,取りこぼしがないように診断・治療を行う。ただし,緊急性を考慮し,診断と治療を同時に施行する場合もある。
また,傾眠や昏睡として容易に表現できない軽微な意識障害や錯乱状態にも注意が必要である。“意識変容”とも言われるが,同様に鑑別診断を考慮することが必要である。また,非痙攣性てんかん重積状態nonconvulsive status epilepticus(NCSE)や辺縁系脳炎limbic encephalitisは見逃されやすいため,注意が必要である。
本稿では,重症度に応じた急性の意識障害患者の診断アプローチを中心に解説する。Wernicke脳症以外の各疾患の詳細は,他稿に譲る。
Summary
●ABCの評価と安定化から開始し,鑑別診断までに二次性脳損傷が進行しないように対応する。
●緊急性を考慮した診察と徹底した鑑別診断を行う。
●原因不明の意識障害では特に,非痙攣性てんかん重積状態や辺縁系脳炎を想起する。
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