徹底分析シリーズ 一歩踏み込む搬送医療—患者搬送のサイエンスとアート
重症患者搬送中の人工呼吸管理—個人,搬送チーム,施設レベルでの総合アプローチが重要
三浦 慎也
1
,
川口 敦
2
Shinya MIURA
1
,
Atsushi KAWAGUCHI
2
1帝京大学大学院 公衆衛生学研究科
2聖マリアンナ医科大学 小児科学教室
pp.670-674
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202289
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重症患者における搬送時呼吸管理の重要性
日本国内で病院間搬送される患者は,年間約51.8万人と報告され1),これは毎日約1400人もの患者が搬送医療を受けていることになる。搬送中の有害事象は多く,重症小児の病院間搬送では12〜20%に呼吸循環や気管チューブ位置に関する有害事象が発生するとされ2,3),予後悪化との関連性も報告されている4)。成人の院内搬送を対象とした前方視的観察研究5)では26%に有害事象が起こり,危険因子は人工呼吸器の高い圧設定,搬送前の鎮静とボーラス輸液の実施であった。Haydarら6)のシステマティックレビューによると,呼吸・気道に関連する有害事象が最も多い。
搬送中の人工呼吸管理を難しくする背景として,人員や機材が限られること,慣れない環境,十分な経験やトレーニングを受ける機会が少ないこと,限られた時間でのコミュニケーションの難しさ,呼吸状態が刻々と変化し得ることなどが挙げられる7,8)。ICUで人工呼吸管理を受けている患者の約3分の1が院内搬送を受けていたとする多施設研究9)があることから,病院間搬送,院内搬送とも,搬送時の呼吸管理は重要であり,かつ,積極的に取り組むべき分野であるといえる。
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