特集 循環器医が知っておくべき 糖尿病 最新の話題
序文
—循環器医が知っておくべき—糖尿病 最新の話題
佐野 元昭
1
1山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学(循環器・腎臓・膠原病)講座(第2 内科)
pp.492-493
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.243232840730040492
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CKM(心・腎・代謝)症候群は,肥満や糖尿病に起因する細胞内代謝異常を起点として,免疫系の動脈硬化促進性(proatherogenic)および炎症促進性(pro-inflammatory)な状態への偏移,神経体液性因子(自律神経系,RAAS,ナトリウム利尿ペプチド系など)の過活性やバランスの乱れ,さらにはナトリウム貯留傾向や造血機能の変調が複雑に絡み合って進展する全身性疾患である.このような病態生理を踏まえると,CKM症候群の各ステージにおいては,心血管・腎リスク因子に対する標準的薬物療法(降圧薬,スタチン,抗血小板薬)に加え,リスク因子が引き起こす恒常性の乱れを是正する薬剤を組み合わせることで,個別化かつ効果的な予防戦略の構築が可能となる.
GLP-1受容体作動薬およびSGLT2阻害薬は,単なる代謝異常の是正にとどまらず,恒常性の破綻に対しても包括的に作用する薬剤である.これらの薬剤は,血糖管理,体重減少,血圧低下に加え,抗炎症作用や循環動態や造血機能の改善効果を有しており,CKM症候群の病態進展を多面的に抑制し得る.そのため,これらの薬剤は,CKM症候群に対する個別化予防戦略の中核を担う治療選択肢として,極めて重要な役割を果たすと考えられる.

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