話題
学習・記憶の分子モデル—第14回全米神経科学会議から
後藤 秀機
1
Hideki Gotoh
1
1岩手医科大学医学部生理学第一講座
pp.536-540
発行日 1985年10月15日
Published Date 1985/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904809
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1984年10月10日より15日までカリフォルニア州アナハイムで全米神経科学会議が開かれた。ディズニーランドに面したConvension Centerで行われたが,2ヵ月前のロサンゼルスオリンピックではレスリング会場に使われたものである。全米神経科学会議は毎年秋に開かれる米国でも有数の巨大な学会で,今回の参加者も第2日目の発表によるとゲストや業者を含めて7,000人を越えていた。シンポジウム,Lecture,Workshopだけで23をかぞえ,個人で全容を掴むのは不可能であるが,ここではシナプス,とくに最近長足の進歩を遂げ今年も,もっとも注目を浴びた,学習に関するE. R. Kandelの仕事を中心にして紹介する。
Kandelはたびたび日本を訪れておりご存知の方も多いと思うが,アメフラシという海産の軟体動物の単純な神経系を用いて,学習の機構を,行動,電気生理,免疫,遺伝子工学,生化学,電顕といったおよそ生物学に関係した近代的な全手法を駆使して精力的に研究を進めている神経科学者である。現在55歳で,コロンビア大学行動神経科学センターの所長であり,50人以上の大所帯を率いている。4年前の本学会会長で,スター的存在と言うべきか多くの人の興味を引き付けている。彼の学翌モデルは大変有名なものだが,一昨年から今回の学会にかけて大きな動きがあった。今度の学会で発表された新知見を紹介する前に,彼のモデルを簡単に説明しておこう。
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