Japanese
English
特集 腸管の吸収機構
小腸上皮細胞の絨毛内分化と吸収機能
Cell differentiations and absorptive function in small intestine
岡田 泰伸
1,2
,
矢田 俊彦
1,2
,
土屋 和興
1,2
Yasunobu Okada
1,2
,
Toshihiko Yada
1,2
,
Wakoh Tsuchiya
1,2
1京都大学医学部生理学教室
2現在:京都大学医学部皮膚科
pp.11-21
発行日 1983年2月15日
Published Date 1983/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904499
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小腸上皮は,管腔内容物より糖・アミノ酸・脂質・ビタミンなどの栄養素や,Na,Caをはじめとする種々の電解質及び水の吸収を行う事により,生命活動に本質的役割を果している。この吸収機能に加えて分泌機能の重要性も看過されてはならない。電解質・水の分泌により平常時には管腔内容をほぼ血漿成分に等しくする事によって吸収機能を根底から支え,異常時にはその著しい亢進により下痢発症の原因となる。また多くの消化管ホルモンや消化酵素を産成し,消化・吸収・分泌機能を調節している。このように多岐にわたる機能を担っているのが1兆個にものぼる小腸上皮細胞である。この細胞は腺窩部において分裂・増殖する1種類の幹細胞に由来し,その寿命はたかだか数日である。腺窩部で新しく生まれた細胞の殆んどは,絨毛頂部へと次第に上方移動しながら数種類の細胞へと分化し,使命を終え管腔内へ脱落する。このように小腸上皮は,成体においても高い増殖性と速やかな細胞分化を,「腺窩—絨毛」軸に沿って不断に実現させている非常にユニークな組織である。ここに「腺窩—絨毛」内細胞分化に関するこれまでの知見を吸収・分泌機能との関連の中で概説した後に,分化メカニズムを探る目的でこれを生理学的研究の爼上にのせる二,三の試みを紹介し,今後の研究の展開を期したい。
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