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特集 神経科学の最前線
「脳の世紀」序曲
A Prelude to Century of the Brain
外山 敬介
1
Keisuke Toyama
1
1京都府立医科大学第二生理学教室
pp.2-3
発行日 1996年2月15日
Published Date 1996/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901051
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卵子と精子から出発して,精緻極まりない知能を産み出す脳の神経回路ができあがる過程は,自然の最大の謎といえよう。二つの細胞の遺伝子の情報量は109,それに対して脳の神経細胞の数は1011,シナプスの総数は1015,それによって形成される神経結合は天文学的な数となる。極めて限られた遺伝子の情報に基づいて,いかにして圧倒的に複雑で精緻な脳の神経回路を作り上げるか。その謎に挑戦する脳科学が21世紀の自然科学の主役として登場しようとしている。米国では1990年7月に,上院と下院の共同決議としてDecade of the Brain Proclamationが議決されている。その宣言の中で,当時の米国大統領ジョージ・ブッシュは脳科学に対する期待と重要性について次のように述べている。
「ヒトの脳,わずか3ポンドの神経細胞のネットワークの塊,知能,感覚,運動の座であるこの器官は,これまで科学者だけでなく一般の人々も魅惑しつづけてきた。近年,脳の理解―それがどのように働き,その障害や病気がどのような機能を侵すかなどの知識―は劇的に増大した。しかしながら,なお,これから知らねばならないことははるかに多く,脳研究の必要性は圧倒的に重い。毎年数百万の米国市民がアルツハイマー病などの神経・精神疾患に侵されている。今や,これらの人々とその家族は新しい時代の到来に強い希望を抱いている。
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