特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
7.昆虫
ショウジョウバエ
行動突然変異の分離のための行動の定量化―視覚行動の場合
堀田 凱樹
1
1東京大学大学院理学系研究科物理学専攻
pp.562-565
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900835
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目標
神経系の研究には単一ニューロンレベルの解析が重要であるが,神経系の最終的な理解にはinputからoutputまでの全体的な理解が必要である。そのためには,中枢神経系の最終的な出力の表われである「行動」を指標とした研究が大切である。とくに「行動突然変異」を解析して脳・神経系の研究をする行動遺伝学は,遺伝子がどのようにして中枢神経系の神経回路網を作り上げ,行動を発現させるかを解析できる重要な分野である。
しかも最近の遺伝子技術の発展により,ショウジョウバエを研究材料に選べば,遺伝子クローニング・遺伝子導入個体の作成なども自由に行えるから,いわば遺伝子の分子レベルの研究から神経回路の形成・行動の発現機構などの高次レベルの理解までを一本の連続した現象として完全に解明していく可能性が出てきている。すでに,視覚行動の研究はその域に達しているし,飛翔行動についても筋肉レベルの研究は大いに発展している。また,学習・体内時計・求婚行動などでも興味深い研究が進められている。
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