特集 現代医学・生物学の仮説・学説
2.分子生物・遺伝学
DNAの再編成(免疫系)
山岸 秀夫
1
1京都大学理学部生物物理学教室
pp.458-461
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900607
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概説
体細胞分化の過程で遺伝子DNAが再編成されて変化することが,1976年利根川らによって免疫系ではじめて証明された。つづいてその再編成のシグナル配列が明らかにされた。すなわち,パリンドローム配列(CACAGTG)の7塩基(ヘプタマー)とA,Tに富む配列(ACAAAAACCまたはGGTTTTTGT)の9塩基(ノナマー)が12または23のスペーサー塩基を挾んだ構造をしている。それぞれを12塩基シグナル,23塩基シグナルとよび,原則的には,組み換えはこの間にしか生じない。しかもそれぞれのシグナルのヘプタマー同士,ノナマー同士は逆向き相同配列になっているので,2つのシグナル配列の間に染色体からループアウトした構造が容易に想定され,この特異構造を認識する組換え酵素のはたらきとして,遺伝子再編成をひきおこす欠失や逆位が理解された。すなわち,この再編成によって多数の可変領域V(D)J組み合わせとその結合部での多様性が生成され,抗体の抗原特異性が理解された。
抗原特異性を共有しながら,種々の生理活性の異なるクラスの抗体を産生する機構も遺伝子DNAの再編成であることが,1978年本庶らによって示された。その再編成のシグナルは,各クラスの定常(C)領域の上流に位置するスイッチ(S)領域に存在する反復塩基配列であって,(C/G) TG (A/G) G5塩基配列を基本単位とするものであった。
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