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ヒトでは46本ある染色体DNAを両親から受け継ぎ,次世代へと伝えていく。もし47本目の染色体を人工的に構築し細胞内で安定に維持させることができれば,DNA複製や染色体分配など染色体機能の解明やクロマチン構造形成のメカニズムの解明など基礎生物学的な研究に大いに役立つ。人工染色体の概念は,1980年代にDNA複製開始に必要な配列,染色体分配に関わるセントロメア,末端構造を保護するテロメアなどの染色体機能配列が次々に明らかにされた出芽酵母の系で確立された1)。これら機能配列を組み合わせた酵母人工染色体(yeast artificial chromosome:YAC,図1)はベクターとしても巨大DNAの酵母細胞へのクローニングに広く利用されるようになった2)。
ところがヒトを含む高等動物ではテロメア以外の機能配列については長い間不明なままであった。染色体分配機能に必須なセントロメアでは,この領域に存在する繰り返しDNAの巨大領域に阻まれ内部構造や機能の解析は困難であった。最近になり,セントロメア特異的な構成タンパク質CENP-A,-B,-C,-E,-F,-H,hMis12,hMis6(CENP-I),Mad2,BubR1,INCENPなどが次々に明らかにされてきた3,4)。これらのうちの多くのタンパク質は酵母からヒトまで保存されている5,6)。さらにヒトセントロメア領域由来DNA配列を用い,ヒト培養細胞中で本来の染色体外でも安定に複製され分配維持されるヒト人工染色体が構築された。RNAiを用いたタンパク質の機能解析やヒト人工染色体を用いた研究により,ヒトでもセントロメア機能構造の形成過程を解析することが可能になりつつある。本稿では,ヒト人工染色体を中心にセントロメア構造形成に関わる因子について紹介する。
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