特集 生命科学のNew Key Word
12.病気
ブラディオン―ゲノムプロジェクトの産んだ分子マーカー
田中 真奈実
1,2
Manami Tanaka
1,2
1(独)産業技術総合研究所バイオニクス研究センターブラディオンプロジェクト
2東海大学医学部
pp.552-553
発行日 2004年10月15日
Published Date 2004/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100647
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
1分子による疾病制御はどこまで可能か。ブラディオンBradeionプロジェクトは,この疑問に明確な回答を与えるものである。ブラディオン(100%産総研特許物質)は,2003年10種類に分類されたセプチンファミリー遺伝子群1)の一型Sept4に属し,細胞の分裂・増殖に関与するGTPaseとして知られている。ブラディオン(αおよびβタイプを有する)はヒト特異的スプライスバリアントを持ち(αタイプ),正常細胞では脳(ニューロン)においてのみ,形質転換後の細胞としてはヒト大腸癌,悪性黒色腫,前立腺癌,腎細胞癌細胞に強い特異性発現が認められる。その発現比は,ニューロンでα:βが約10:1,癌細胞では1:1である2)。
元来この遺伝子は,ヒトゲノムプロジェクトの所産であり,平成9年に発見された(特許出願平成10年,承認平成12年)。細胞寿命の制御に関わる新規遺伝子を抽出するために,ヒト各臓器別cDNAライブラリーの構築を計画,当時ゲイテルスバーグにあったGIBCO/BRL社と連携して,NIHより購入したヒト臓器を用いた。特に,ヒト脳,心臓,肝臓などに大きな期待をかけ,他の多臓器ライブラリーとの発現比較を行った。ここで,発見の要は,最も重要なのは初回生産版,つまりはコピーではなくオリジナルを使用できたということである。
Copyright © 2004, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.