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細菌やウイルスなどの病原体の多くは粘膜を介して感染することが知られている。粘膜ではこれら病原体の侵入に対して,全身免疫系とは異なる独自の生体防御機構(粘膜免疫系)を備えており,その主体がIgAである。IgAは血清中に存在する単量体IgAと,涙液,母乳,および消化管粘液などの外分泌液中に存在する分泌型(二量体)IgAに分類され,特に後者は病原体や腸内常在菌などの微生物の粘膜上皮細胞への付着・定着の阻止,あるいは微生物の生産する毒素を中和することにより粘膜面の感染防御に重要な役割を担っている1)。また,IgAは生理的条件下,生体内で最も多く生産される免疫グロブリンであり(40-60mg/kg/day;ヒト),そのほとんどが粘膜面において分泌型IgAとして存在する。事実,生体内における全形質細胞の80%が粘膜に局在しており,その80%がIgA生産性形質細胞で占められる1)。このことからも,粘膜がIgA生産に特化した組織であることが理解できる。
しかしながら,IgAの半減期(26.6時間)は他のアイソタイプよりも短い(IgGは280時間,IgMは35.4時間;ヒト)ことから2),粘膜ではIgA生産を効率的に誘導する機構や,それを維持する微小環境が構築されていることが予測される。その一つに腸内常在菌が挙げられる。事実,腸内常在菌叢を欠く無菌マウスでは分泌型IgA生産が著明に低下しており,また通常の常在菌叢をもつSPFマウスにおいて生理的に生産される分泌型IgAは腸内常在菌成分を認識する3)。しかしながら,IgA生産が粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue;MALT)で他のリンパ組織よりも選択的かつ効果的に誘導される分子機構の詳細は依然として不明である。われわれは,TNF/iNOS生産性樹状細胞(Tip-DC)がMALTや小腸粘膜固有層に多く存在しており,生理的なIgA生産誘導に重要な役割を担っていることを明らかにした4)。本稿では,粘膜Tip-DCによるIgA生産誘導機構について紹介したい。
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