投稿 総合診療外来・在宅
酢酸亜鉛水和物錠が原因と考えられた胃病変の3例
山根 建樹
1
,
梅田 啓
2
,
稲見 茂信
3
,
秋田 貴之
4
,
大竹 孝明
4
1国際医療福祉大学塩谷病院 消化器内科
2国際医療福祉大学塩谷病院 呼吸器内科
3国際医療福祉大学塩谷病院 循環器内科
4国際医療福祉大学病院 消化器内科
pp.1443-1446
発行日 2025年12月15日
Published Date 2025/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350121443
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必須微量元素である亜鉛の欠乏は、味覚異常、皮膚炎、口内炎、脱毛、汎血球減少、免疫能低下、認知機能低下、骨粗鬆症などをもたらす1,2)。また、慢性肝疾患患者は低亜鉛血症をきたすことが多く、亜鉛欠乏は肝臓の線維化進展や肝がん発症のリスク増加につながる2)。よって亜鉛欠乏症には、食事療法でも改善が得られない場合、酢酸亜鉛水和物錠(ノベルジン®、以下、酢酸亜鉛)の服用が推奨される。
酢酸亜鉛は、亜鉛欠乏症以外でもWilson病において腸管からの銅の吸収抑制目的で、尿中に銅を排出するキレート剤と併用ないし単独で用いられる3)。酢酸亜鉛は、以前はWilson病のみが保険適用であったが、2017年より亜鉛欠乏症にも認可された。それ以前は、亜鉛欠乏症に対しては未承認であるが、胃潰瘍治療薬のポラプレジンクが代用されていた。ポラプレジンクの最大亜鉛含有量は34mg/日であるが、酢酸亜鉛は最大で150mg/日までの亜鉛投与が可能である。酢酸亜鉛は重大な副作用が少ない薬剤とされてきたが、最近胃粘膜傷害に関する報告がみられている4〜7)。しかし、胃粘膜傷害の発症機序や胃酸分泌抑制薬の効果などについて不明な点が多い。同薬が原因と考えられた胃病変の3例を経験したため、本稿にて考察を加え報告する。

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