特集2 本誌連載から生まれた『精神科仕事術 この科で働くことを決めた人が、やったほうがいいこと、やらないほうがいいこと』を読む
『精神科仕事術 この科で働くことを決めた人が、やったほうがいいこと、やらないほうがいいこと』を読んで、思い出されたいろいろなこと
増井 莉菜
1
,
八田 篤郎
2
,
丸目 武久
3
,
村田 和美
4
1一般財団法人信貴山病院 ハートランドしぎさん
2医療法人尚生会 湊川病院
3医療法人宮本会 紀の川病院
4医療法人昭友会 埼玉森林病院
pp.119-128
発行日 2022年3月15日
Published Date 2022/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200982
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1.まさにそのこと、悩んでいた!
■あのAさんがなぜ……?
入職したばかりで、新しい環境に慣れない日々、私はAさんという患者さんの「看護師さん、おはよう」という挨拶とその笑顔にいつも救われていました。Aさんは毎食の配膳の時に出勤したスタッフ全員に挨拶をしてくださっていました。私はAさんから、忙しく過ぎる業務の中でふと立ち止まり、緊張で強ばった顔から笑顔を取り戻すきっかけをもらっていたように思います。
ある日出勤すると、Aさんの挨拶が聞こえません。申し送りで、夜間に自傷行為があり、保護室のある病棟に転棟になったと聞きました。「どうしてAさんが?」と初めて目の当たりにする精神科特有の事柄にショックを受けながらも、「自傷行為を起こす要素なんてあっただろうか……」と申し送りを聞きながら思いをめぐらせていました。同時に、Aさんのことについて全然知らなかった自分にも気がつきました。
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