連載 精神科医の家族論・9
きょうだい―なかにし礼の場合
服部 祥子
pp.1054-1057
発行日 2009年12月15日
Published Date 2009/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101496
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きょうだい関係の意義と病理 ~カイン・コンプレックス,きょうだい葛藤など
フロイトの精神分析学的見解では,個人の発達や精神内界にもっとも大きな影響を与えるものを幼少期の親子関係とし,きょうだい関係はその副次的なものととらえている。たとえば4,5歳の子どもは異性の親に強い愛情を抱き,独占的に所有したいと願い,そのため同性の親を疎ましく思って亡き者にしたいという願望をもつとして,これをエディプス・コンプレックスと名づけた。そこではきょうだい,ことに同性のきょうだいの場合は,同じ親(男きょうだいなら母親,女きょうだいなら父親)をめぐって激しい競争や嫉妬,攻撃が起こる。また異性のきょうだいが仲良くしたり,愛し合ったりする場合も,たとえば兄が妹を可愛がる場合,それはもともと母親に向けられた愛が報われないため,母親への愛を妹に向け代えていると考える。このように幼少期のきょうだい関係はエディプス・コンプレックスの影響を受けつつ,そこから派生した競争や葛藤とみなすという基本姿勢である。
これとは別に,精神分析学には同胞葛藤として「カイン・コンプレックス」という概念がある。これも親子関係が主軸にあり,そこからきょうだい関係が生まれると考える。つまり幼い子どもにとって絶対的依存の対象である親がどのような考えや気持ちをもってきょうだい各々にかかわるのかという親子関係が,きょうだい間の関係性に大きく響くというのである。
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