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はじめに
薬物治療において,どんなに素晴しい処方でも,その処方薬が正しく服用・使用されない限り,目標とする結果を得ることはできない。もし間違った服用・使用がなされているとすれば,出てくるのは中途半端な結果であり,次回の診断,処方にも活かせず,それは,薬物治療の完結がなされないことを意味する。
私たち薬剤師は日常の投薬窓口や在宅の服薬管理という業務において,服薬に関する多種多様な問題に遭遇する。恐らく,他の医療・介護職の方も同じような問題に遭遇しているはずである。
そして,薬の正しい服用・使用ができなかったという理由・原因も種々多様である。
最近発表された「処方薬の服用に関する意識・実態調査」(ファイザー社)では「約8割の人が自分は『きちんと薬を服用できている』と思っている。しかし,その意識とは異なり,処方薬の飲み忘れは7割以上の人が経験しており,全体の6割以上の人が薬の服用を途中でやめている。また,4人に1人は処方薬の用量を自分の判断で自己調節しており,全体の半数以上が,抗生物質・抗菌薬の服用中断に伴う耐性菌発生リスクを知らない」という調査結果が出ている。
このように,多くは正しい服薬の認識の薄さに原因を見出すことができるが,なかには,特に高齢者において,患者本人に前向きなコンプライアンス意識があるにもかかわらず,何らかの理由で薬の正しい服用・使用ができないという場合も多々ある。まさに服薬支援と多職種連携による服薬介護支援の必要なケースである。
そこで必要なことは,患者の「他人に迷惑を掛けずに,できるだけ自らの力でできることはしていきたい」という思いを,服薬においても実現していくような服薬支援である。
ここでは,私たちの在宅業務等において使用している服薬支援のツールや工夫をいくつかご紹介したい。
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