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はじめに―痛み治療の現実と課題
■まだまだ不十分な痛み治療
がんの痛みの治療は,一昔前のモルヒネしか使えなかった頃に比べて,デュロッテプパッチ®やオキシコドン(オキシコンチン®)が使えるようになり,ずいぶんとやりやすくなってきた。こうした状況はまことに喜ばしいことではあるのだが,一方日本の現実はまだまだ厳しい。
がん専門病院ですら,完全な除痛率が60%程度といわれ,また,1人あたりの麻薬使用量は欧米諸国よりはるかに少ない。日本ではまだまだ多くの人ががんによる痛みに苦しんでいるのである。
■服薬コンプライアンスの問題
理想的には1種類の薬で,がんの痛みが副作用もなくすべて取れたらよいのであるが,現実にはそんな薬はまだ存在しない。
がんの痛みを取る薬には副作用があり,その副作用を抑える薬を飲まなければならない。また痛みにもいろいろな種類があり,その痛みの性質に応じて,複数の鎮痛薬を飲まなければならない。
がんの患者さんの飲んでいる薬は,痛み止めだけではない。気がつけば毎日朝昼晩と片方の手のひらに乗り切らないほどの薬を飲まなければいけないこともある。鎮痛薬を処方するときにはこうしたことを考慮して,服薬コンプライアンスを向上させる配慮が必要である。
在宅では,服薬管理も患者本人や家族が行なわなければならない。がんの痛み治療の中心であるオピオイド(鎮痛性ペプチド)は,毎食後という飲み方はせずに,8時間ごととか12時間ごとという飲み方をしなければならず,がんの痛みの制御にはこれにレスキューという頓服が加わってきて,事態はさらに複雑になる。
その時々の状況に応じて必ず飲まなければいけない薬と,場合によって飲まなくてもよい薬をきちんと示すことも必要になる。
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