連載 つなぐ―親子2代・11
旅館
澤 功
1
,
澤 ヨネ子
1
,
澤 新
1
1澤の屋
pp.989
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100726
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- 文献概要
「澤の屋」のある東京・谷中は寺の町,界隈には古い街並みが今も息づいている。修学旅行生の宿泊が激減し,経営が難しくなった昭和57年の夏,功さんは外国人客の受け入れを決心する。それも全12室(畳敷き)の小さな旅館のままで。以来,システムに工夫を重ね,現在までに世界90か国から述べ12万人の外国人客を迎えた。93%の稼働率=いつも満室という盛況振り。功さんが体調をくずしたとき急遽,仕事を手伝い始めた新さんは,「そのときはじめて,父親が大きな存在であることを知りました」と。功さんは,地元の旅館業組合ばかりでなく,日本全国の外国人客を迎える旅館業をまとめる存在であり,笑顔をたやさない語り口で,各地で講演も続けている。
「英語が苦手だった」という新さん。でも,不自由はない。聞き取れなかったら,ゆっくり話してくださいとお願いすればいい。そして「澤の屋がこうしてあるのは外国からのお客様のおかげです」という新さんは,上野旅館組合の青年部で獅子舞をならい,月に一度は宿泊客に披露する。はじめは町の人たちに受け入れてもらえるよう説明にもまわったが,そもそも,来るものは拒まずの下町気質。町をあげて迎えてくれるから,部屋が狭いと言っていた客もすぐに町が気に入って,楽しんでいる。旅の目的は別にあり,宿は手段,他と違うことを外国人客は喜び,澤の屋が変わらないこともまた喜んでくれると功さんは話してくださった。
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