「迷い」を解くランドマーク

　パリにあるオルセー美術館は，1986年に旧オルセー駅を改修して造られた．かつてはプラットホームとして利用され，鉄骨で組み上げられた大空間の中に，いくつもの展示室が複雑に組み込まれている．それぞれの展示室を一筆書きで巡り歩き，効率的に見て回ろうと思っても，そんなやさしい造りにはなっていない．すぐに自分の居場所がわからなくなり，進路にとまどってしまう．しかし，そんな時ちょっと展示室から出ると，いつもこの写真に見られる大空間が見えるために，自分の位置を再度確認し，今まで見た展示室とこれから行きたい方向がわかるようになっている．

　同じパリのルーブル美術館も，かつての宮殿をそのまま展示施設として利用しているために，美術品を見に来ているのか展示室を探しに来ているのかわからなくなるが，窓の外に見える中庭やガラスのピラミッドが道しるべとなってくれる．