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はじめに
看護実践の改良や質の向上のために,看護研究から得た知見を活用することは必要不可欠である。実践の最前線である患者のベッドサイドで直接患者ケアを行なっている看護師(スタッフナース)が,根拠に基づいた実践(evidence-based practice ; EBP)をいかに行なうことができるかが,看護実践の質を左右する一番のキーとなることが考えられる。
しかしながら,ベッドサイドにいるスタッフナースにとって,研究から得られた知や根拠(evidence)を活用したり,また実際に研究活動に参加することには,多くの障壁があることが報告されている。例えば,①研究を活用する知識や手法に関して十分なトレーニングを受けていない,②研究への誤った認識や,ネガティブな印象がある,③患者ケアに要する時間が主になるため,看護研究へ費やす時間を捻出することが困難である,④看護部や病棟管理者のサポートが十分に得られない,⑤実践を変えることなどできないという先入観,などが報告されている(Edwards, Webber, Mill, Kahwa, & Roelofs, 2009 ; Latimer & Kimbell, 2010)。また,研究活動は学術的な立場にある人間が行なうものであり,臨床にいる自分たちにとっては他の世界のことのように臨床看護師は捉えていることも報告されている(Alde, Cheek, & Ballantyne, 2009)。このような現状が,臨床実践と研究とがなかなか結びつかない障壁と考えられる。
しかしながら,看護実践を変えるために最も理想的なポジションにいるのは実践をしている看護師であり,彼(彼女)らを抜きには,不可能である。
そこで本稿では,EBPのための,スタッフナースを対象とした研究活動支援プログラムやその取り組みに関して,米国の病院組織で行なわれているプログラムを2つのタイプに絞って紹介することとする。1つは,個人の希望によりプログラムを受講するタイプ,もう1つは,病棟から4~5人を選抜してチームで展開するタイプである。いずれにも共通するのは,スタッフナースが臨床実践で疑問に感じていること,さらにそれがEBPにおいて解決可能なテーマである場合に,スタッフナースが参加しながら解決を図っていくというプログラムということである。
そして,看護実践の質向上,参加した看護師個人の成長,病棟組織の成熟といったプログラムアウトカムを合わせて紹介する。これらから,日本におけるEBPの実践や臨床における看護研究のさらなる発展に向けた,スタッフナースの研究支援体制についての展望を考えていきたい。
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