連載 りれー随筆・414
幸せを感じる心を育みたい
岩永 夏美
pp.622-623
発行日 2019年7月25日
Published Date 2019/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201316
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ハグと絆
20代の最後から30代の最初にかけて2年間,青年海外協力隊に参加して,中米のグアテマラ共和国で助産師として活動した。ここで出会った人々に,幸せは誰かと比べるものでも,他人から与えられるものでもないと教えてもらった。愛情にあふれ,家族の絆とコミュニティーのつながりを大切にするグアテマラの人々と生活を共にして,それまでとは少し違った尺度で人生を見ることができるようになった。
嫁に行ったつもりで頑張りなさいと言われたホームステイでは,家族の一員として本当の娘のように愛情深く,時に厳しく迎えてくれた。掃除機も,洗濯機も,ガスコンロもなく,家事には日本の何倍も手間と時間がかかる。かまどで調理していると,うっかり薪を追加し忘れて火が消えそうになり,まだまだ嫁には行けないねと何度笑われたことか。湯を沸かした大鍋を浴室に運んで,震えながら髪や身体を洗い,「熱いシャワーが浴びたい。日本の便利な生活が恋しい」と思ったことも数え切れない。それでも,暖かいかまどの周りに家族が集まって食事し,おはよう,ただいまと日に何度もハグをし合う生活は,日本ではなかった人のぬくもりにあふれていた。
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