特集 中絶のケア
中絶に関する外国文献解説
大久保 美保
1
1助産師・日本赤十字看護大学大学院修士課程卒
pp.229-234
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100486
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主題の変遷
人工妊娠中絶(以下,中絶とする)は是か非かという論争の歴史は古く,4000年以上前にさかのぼるといわれている。しかしながら,諸外国における中絶合法化の歴史は浅く,西欧諸国の多くは1960年~1970年代に集中している。米国では1973年の「ロウ判決」以降,イギリスでは1967年であり1),中絶に関する文献の多くはそれ以降に発表されるようになっている。
現在,中絶に関する外国文献は数多く,医学系を中心とした検索システムを用いても,我が国における文献と比較するとかなり違いがある。米国のように政治的,倫理的論争としてプロチョイス(中絶賛成派) vs. プロライフ(中絶反対派)に分かれて,公の場面で激しく議論される国もあれば,他のカトリックやイスラム教の信仰者を中心とした国では,宗教的見地で活発に議論のなされる国もある。開発途上国のように中絶による死亡者が多いところでは,中絶を安全にできるための方法論や避妊・家族計画などの見地から検討されることが多くなっている。多くの中絶に関する文献を概観してみると,文献のテーマは,おおよそ1980年代後半から1990年頃を境にして少しずつ変化がみられ,それ以前のものでは,中絶の傾向に関するもの,中絶と避妊,中絶の倫理に関するもの,中絶の歴史,中絶の権利,中絶のリスクなどが多くみられていた。
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