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はじめに
看護系の大学や大学院が年々増加するなかで,研究成果の発表も盛んに行われるようになっている。発表をするということは,研究活動の最終段階であり,主な形態として学術集会での発表と論文発表がある。この2つの違いは何だろうか。
学会発表の主な目的は,自身の研究について知ってもらい,その場で議論するということである。抄録(学会の講演抄録集など)という形で研究成果は残るが,学会誌によっては,抄録は文献として引用できないとしている場合もある。また,そのような規定がなくとも,情報量が少なく,研究のプロセスや結果の詳細を確認できないので積極的に引用することは少ない。つまり,せっかく発表しても,それだけではその後,同様の領域の先行研究として取り上げてもらえない可能性があるということになる。研究成果を確認できる形で残すためには,論文発表が最も適切な形である。
さて,論文が知識として活用される,つまり看護実践や看護教育の発展に貢献するには,執筆の原則やルールを守ったうえで書かれた,良質な論文が必要である。これは,「原著論文」のような独創性の高い論文でなければ価値がないという意味ではない。実践的に活用できる,あるいはその後の研究につながるような「報告」もどんどん公表されるべきであり,これら1つひとつの論文の「人に情報を伝える」という観点での質が重要になるということである。
論文執筆の原則やルールは,看護研究をテーマにした書籍や,論文執筆マニュアルとしてよく用いられるアメリカ心理学会の『APA論文作成マニュアル』1)などからも学ぶことができる。そしてもちろん,各専門誌や学会誌の投稿規定もある。しかし,私自身や大学院生の指導に関わった経験からは,これらをもとに助言を受けながら,原則を解釈してつくり上げていく経験が必要であるように思う。また,学会誌の編集作業や論文査読を担当してみると,執筆経験がない著者がまったく助言を受けずに投稿したのではないか,投稿規定を読んでいないのではないかと感じさせる例もあり,執筆にかけたであろう時間や労力をもったいなく感じることも多い。
本稿では,論文執筆から投稿までの流れの概略とともに,そのなかで間違いや問題になりやすい点を挙げ,どんな点に注意するべきかを解説する。
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