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アメリカの妊婦検診とチャイルドバースクラス
皆さんはこの夏をどのようにお過ごしになられましたか?私は修士課程1年目をミシガン大学で過ごしましたが,夏にミシガン州からニューヨーク州に引っ越しました。アメリカでは9月から新学年が始まるため,今年の9月からはニューヨーク大学に所属して,引き続き助産学を専攻しています。ニューヨーク大学はマンハッタンにあり,大学周辺には観光スポットやお店などたくさんあるため学生や観光客を含め毎日とても賑やかです。
今回は,アメリカのクリニックにて妊婦検診とチャイルドバースクラスについて学ぶ機会がありましたのでご紹介させていただきます。まずアメリカの産科クリニックでの妊婦検診についてですが,日本の妊婦検診と比較するととてもシンプルです。妊婦検診では基本的には血圧,体重,尿検査,心音確認を行うという流れになります。妊娠期に超音波検査をするのは2〜3回ほどで,その他は毎回ドップラーという手のひらサイズの器械で赤ちゃんの心音を確認します。もちろん赤ちゃんの状況に応じて必要な場合は超音波検査を行いますが,必要がない場合は日本のように毎回超音波検査をすることはありません。毎回の妊婦検診でその都度,気になることがある場合は医師と話をしますが,毎回超音波検査をするわけではないので短時間で終わります。日本で出産経験がある方は物足りなさを感じるかもしれませんが,毎回超音波検査をする必要性がないという判断のもと検査を行っていないため,医療費が高いアメリカでは理にかなっていると思います。妊娠後期になると,チャイルドバースクラスに参加することを勧めています。アメリカのチャイルドバースクラスは日本の母親学級や両親学級のようなものです。私が日本で働いていたときは,妊娠初期,中期,後期にそれぞれ1回ずつ2時間ほどの母親学級と両親学級が週末にありました。アメリカでは妊娠後期の妊婦さんを対象とした1回4〜5時間ほどのチャイルドバースクラスが行われています。このクラスはチャイルドバースエデュケーターという方が行います。多くの妊婦さんたちは,ご主人さんやパートナーの方と一緒に参加されます。クラスの内容は,日本の後期母親学級に似た内容で,入院のタイミングや呼吸法,分娩中の過ごし方などがメインです。その他にも,産後に母乳育児について相談ができるように,母乳育児の専門家であるラクテーションコンサルタントの連絡先を紹介したり,アメリカでは生まれる前から赤ちゃんの小児科医師を探しておく必要があるため小児科医師の連絡先なども必要な方には提供しています。アメリカは医療保険制度が複雑であり,自分がもっている保険が適応される医師を探さなければいけないからです。万が一,小児科医師を見つける前に赤ちゃんが生まれた場合は,出産した病院にいる小児科医師が赤ちゃんの診察をしてくれるため問題はないのですが,保険でカバーされる医師を見つけておいたほうが心強いですよね。そして,クラスの最後には実際に病院の分娩室LDR(Labor and Delivery Room)と産後の部屋を見学します。参加者は,自分が出産する病院の入り口から産科病棟までの行き方を確認したり,実際の分娩室を見学したりすることで,出産へのイメージが高まっているようでした。日本の母親学級と比較すると1回のクラス時間が長いため,特に妊娠後期でお腹が大きくなっている妊婦さん達には長時間座っていることは大変そうでしたが,出産予定日が近い妊婦さん同士が集まることでお互いに出産への準備や確認したいことなどについて情報交換しており,とても有意義な時間を過ごされているようでした。
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