第2特集 看護学生論文―入選エッセイ・論文の発表
論文部門
【優秀賞】その人らしさを支える援助―認知症高齢者の看護を振り返って
市川 綾美
1
1独立行政法人国立病院機構高知病院附属看護学校
pp.638-641
発行日 2011年8月25日
Published Date 2011/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101840
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はじめに
高齢者は,これまでの時間をどう生きてきたかが,現在の健康状態や生活習慣,価値観に深く反映されている。老年看護においては高齢者の生活背景に関心をもち,個別性を捉えていく必要がある。
私が受け持ったA氏は認知症があり,毎日のように「草を引きたい」と訴えていた。しかし実際に草を引くことはできず,何もせずに一日を過ごすことに苦痛を感じていた。私は,要求が通らないことや訴えても周囲に理解してもらえない状況が,A氏の興奮を増強させている要因ではないかと考えた。
そこでA氏の生活背景を知り,A氏が役割遂行に対する満足感を得られるよう援助していった。実際の介入を通して,認知症高齢者がその人らしく生活していくためには,日常の生活の継続に努めることや相手の世界を尊重することが大切であるということがわかった。
A氏へのケアの場面を振り返り,文献を用いて検討することで,認知症高齢者がその人らしく生きるための効果的な援助方法について明らかにすることを目的とし,本主題を設定した。
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